相続不動産は生涯にわたる人生のパートナー
これまで沢山のお取引を通じて、今私が素直に感じている事、それは相続不動産はお客様の人生の1ページに確実に刻まれるという非常に大義ある素晴らしい経験と財産という事です。
ただ単に、不動産を売り買いする。
一言で言えばそうなのですが、そこにはいつも沢山のドラマがあります。
今回は、その中でもつい最近の出来事で、とりわけ思い出深かった仙台のお取引について寄稿致します。
これから不動産を相続される方は、もちろん相続に携わる士業の先生方や遺品整理業者様や不動産関連の同業他社様にも是非、目を通して頂きたい内容となっております。
2022年2月仙台市にお住まいの不動産オーナーであるS様に管理されているアパートの売却依頼を頂きました。
このアパートが建っている土地の所有者はS様ではなく他の方名義である為、通常の売却と比べると、手続きややりとりが煩雑なケースになるのですが、実はこの土地の所有者が、S様の配偶者(現在は他界)のご親族だったのです。
・血の繋がりのないご親族
・土地所有のそのご親族は不動産運営と管理を全く分からない
・配偶者が他界して以降、疎遠となっており以前からお互いに性格が合わない
不動産業者様や弁護士の方ならすぐにピンとくるのですが、これはかなり一筋縄ではいかない場合が多く、売却にあたり、土地と建物それぞれの所有者様から判子や署名などをもらう必要があるなかで肝心の土地と建物それぞれの所有者が、連絡を取り合うことが難しい状態だったのです。
私がまず心掛けた事は、間にはいり、アパートの所有者S様のお気持ちをしっかりと汲み取り、それを土地の所有者であるご親族様と、売却が決まった後は、管理会社様と、3社の間に入り、それぞれの代理人となり、連携を図りました。
これは想像を絶するほどに大変な作業で、正直三度ほど心が折れかけました。
本来私は口下手で内向的な性格なので、これは本当に無理だと諦めかけたこともあったのですが、そんな時ふと
「難しい知識も専門用語も必要ない、必要なのはお役に立ちたいという思いだけだ!」
奮い立った私は、もう一度立ち上がり、真摯に丁寧に全てを説明し、
心からの気持ちをお伝えしながら、半年近くかかりなんとか関係者の皆さんにご理解頂き、無事10月にご決済が完了しました。
売主様からは、非常に頼りにして頂き、ご希望通りの売買が出来たので、私もホッと胸を撫で下ろしました。
S様からは、
・お任せしてよかった
・これで悩みがなくなった、将来この先も安心できる
・これで相続の予定であった娘に大変な思いをさせなくて済む
・亡くなられたご主人様に良い報告が出来る
などなど嬉しいお言葉をいただきました。
「ご主人様に良い報告とは何なんだ?」
後で私にだけそっと教えてくださったのですが、実はこのアパート、S様ご夫婦がご結婚前に同棲していたアパートで、
敷地に植えてある紅葉を見ながらお二人で仕事終わりに晩酌をして、将来のことを語り合っていたご夫婦の思い出の不動産だったのです。
ですが、いつの頃からか美しい思い出が、配偶者様のご親族との感情のもつれにより、S様にとって忌まわしい不動産となってしまっていたのです。
お引き渡しの時は、ちょうど敷地の紅葉が少し色つき始める頃でした。
その紅葉を見ながら、S様が一言
「本当に有難うね。あ〜、ここの紅葉ってこんなに綺麗だったのね。いつの間にか忘れていたわ。。無事に繋がりを切ることができたし、これで昔の楽しかった思い出を胸に残りの人生を楽しく過ごすことが出来そうです。」
嬉しそうな、また複雑な思いがありながらも喜んで感謝の気道を伝えてくれたS様の言葉はとても重く、
私もまた諦めずに頑張って、自分の力以上の仕事ができて本当によかったと思える、本当につい先日の出来事でした。
私の仕事、それは相続不動産。
私の誇りであり、私の人生そのものです。
これからもこの仕事を通じて沢山の方の人生をより良い方向に、ご依頼者様のお心が前に進む契機となるよう邁進していきます。